“今回のプロジェクトの原点は、坂崎さんからこの歴史的個体(#236913)のメンテナンスを依頼いただき、その内部構造を入念に分析させていただいたことにあります。 ちょうど私の製作家人生50周年、そして共に歩んできた三木楽器さんの200周年という節目が重なり、「このギターを元に、最高峰のレプリカを作りたい」と坂崎さんに打診したところ、「塩﨑さんに作っていただけるなら是非やりましょう!」と快諾をいただきました。
私が目指したのは、単なる素材や形のコピーではありません。当時の職人たちが施した加工の意味、それがどう音に影響を及ぼしているのかという『設計思想』そのものの再現です。経年や個体差によるトップ材の絶妙な厚みの変化、音の伝達を左右するブレイシング面の精密な削り出し、さらには塗料ののせ方に至るまで、当時の意図を咀嚼し、現代に再現しました。
例えば、あえてブレイシング(力木)には熱処理(トリファイド)を施していない‘生材’を組み合わせています。これによって、このプロトタイプ特有の‘微妙なニュアンスや粘りのあるトーン’をコントロールし、半世紀以上の時を経た現在のリアルなサウンド変化を表現することに成功しました。坂崎さんや関係者の方々に試奏していただいた際、「幸ちゃんのギターと同じ音がする!」と驚嘆していただけたことが、何よりの証明かと思います。
外観のディテールにも一切の妥協はありません。厳選したソリッド・レッド・アバロンをつかったヘキサゴン・インレイや、ボディ全体のソリッド・アバロン・トリム。サイドバックやヘッドに使用した良質なブラジリアンローズウッド。今は良材の確保以前に素材そのものの確保が難しい状況ですが、国内のデッドストック材を探しだし、わずかですがこの企画にふさわしい材を確保する事ができました。
私の50年の集大成、その響きをぜひ体感してください。”
─塩﨑雅亮